ネット不動産フロンティアノート



不動産仲介業の本質・特徴・・・ No.3-11

10年程前のことです。わが国の財政当局が国債の大量発行に踏み出し、一方、公共事業の削減が叫ばれていた頃のことです。

私の本業である不動産鑑定業は、典型的な公共事業依存型の業界でしたし、今までもそうです。特に、地方の不動産鑑定事務所は公共事業・公的評価全面依存型だったので、「脱公共事業依存」ということで、様々なことを模索してきました。

インターネットが世の中に普及し始めており、ホームページの情報発信力と検索エンジンの情報収集力の「凄さ」に感動していた頃です。ネットと文献をフルに活用して、不動産鑑定業界がどうすれば公共事業依存型から抜け出し、自力で世の中に存在できる業界になれるかを考え続けていました。

その中で見い出した一つの方向が、バイヤーズエージェント(買い主代理人)という不動産仲介業に進出するという路線でした。NPO法人、日本バイヤーズエージェント協議会のメンバーになり、「わが国におけるバイヤーズエージェントの課題と展望」(http://www10.plala.or.jp/tika-infre/buya.htm)という小論をまとめ、業界誌「不動産鑑定」に発表したりしました。

その時、つくづく思ったのですが、買い物をして代金を払った上に、さらに手数料を取られるという不動産仲介業の世界は「少しおかしい」のではないかということです。

普通、買い物をすれば当然代金は払いますが、その他に3%+6万円の手数料を買い主が支払うことは、何か変だなと感じました。

バイヤーズエージェントついて資料を集め、調べを進めていく中で、バイヤーズエージェント発祥の地米国では、買い主は仲介手数料を払わないという取引習慣だということが分かりました。

売り主から、セーラーズエージェント(売り主側仲介業者)として5%から6%の仲介手数料を受け取るというシステムが定着しているとのことです。

売り主は物件が売れることで代金が入ります。その代金の中から6%程度の手数料を支払うことにそれほど抵抗感がないであろうことはよく分かります。

売り主側の仲介業者は、買い主を探しだし、お客さまを連れてきたバイヤーズエージェント(買い主側仲介業者)に3%の手数料を支払うシステム、つまり仲介手数料を折半するという制度です。

日本の仲介業者から見ると、売り主側の仲介業者が、買い主を探し出して成約になれば、仲介手数料は満額6%、文字通り両手で受け取れるのに……と思いますが、米国の大部分の州では法律で、双方代理・双方仲介を禁じているのです。

双方仲介・両手数料を法律で禁止するに至った経緯は多々あるようです。州によっては、売り主側の仲介人であることを明示し、買い主がそれを認識し承諾する場合は、双方仲介を認めているところもあるようです。

双方代理・双方仲介を禁止するに至った大きな理由の一つに、公正な取引・透明な取引を求めるマーケットの声、買い主としてのお客さまの声があったことも確かなようです。

どんなに理屈を並べ立てても、売り主側と買い主側では、価格の点で利害が真正面から対立するわけです。加えて、物件に関する情報、特に住宅についてのマイナス情報は、その建物に永く住んでいた売り主は十分に知っているわけです。買い主側には、それは調べてみなければ分かりません。売り主と買い主との「情報格差」は大きいのです。

買い主が自分のために働いてくれる仲介業者をあいだに入れ、価格交渉から土地や建物に問題はないのか否か、契約から代金決済・引き渡しまでの安心・安全取引のサポートを受けようとするのは当然のことです。

この、至極あたり前のことが、実現していないのがわが国の不動産仲介業だといったら、言い過ぎでしょうか。

昨年8月の衆院選に際した民主党が打ち出した「INDEX2009」に、不動産仲介業の「両手禁止」という内容が採り入れられました。

これに対して、ブランド力を使って双方仲介を収益の柱としてきた大手仲介業者を中心にして反対の声が上がっています。「旧い体質」の中小の仲介業者も内心では反対でしょう。

しかし、マーケットは変わったのです。買いのお客さま(お金を払ってくれる本当のお客さま)が主導権をもつ市場、買い手市場に変わったのです。

時代の変化やマーケットの変化に逆らう業界、お客さまに本当の話をしない業者、お客さまの利益のために汗を流さない業界や業者に未来があるとは思えません。

たしかに、売り主も仲介業者にとってはお客さまです。しかも、「両手数料」という美味しい案件を持ちこんでくれる大切なお客さまです。

しかし、不動産マーケットという大きな立場で不動産仲介業界を見た場合、物件を買うお客さま、商品にお金を払う側がお客さまなのです。「両手禁止」という問題を考えるに際しても、お客さまの立場に立つ、お客さまの最も身近な場所にいるという原則に戻って考えれば、答えは明らかです。

お客さまに「満足感」というサービスを提供し、胸を張ってお金をもらえるような仲介業者になること以外に、どんな道があるのでしょうか。

「顧客満足」の提供、時代のキーワードはこの一言です。ここに、不透明なことやウソが混じっては「信頼」という二番目に大事なものを失うことになりかねません。



ページ上部へ戻る


フロンティアへ

 テーマ 一覧

・記事を追加した時にお知らせメールを希望する方はこちらへメールをお送りください。Takakanへメール
・ご意見・ご感想もお待ちしております。
・当ページの文章の引用・転載はご自由にどうぞ。

関連ページ