ネット不動産フロンティアノート



仲介業・マーケット・日米の違いから学ぶ・・ No.5-2

(2)社会的背景の違い

米国に限らず、ヨーロッパ諸国とわが国の社会制度、法律体系を比較する場合、性悪説に基づく制度設計か、性善説に基づく制度設計かの違いを強く感じます。

米国のエスクロー制度は、人間は自由に行動させれば、自己の利益のために悪事もしかねないという前提に立っており、その予防のためには中立・公正な第三者機関(エスクロー等)が必要だという考え方です。

加えて、米国は多民族・多人種国家であり、考え方や生活習慣、人生観に違いがあるのは当然ということを前提にした「契約社会」を形成しているとされています。

わが国の場合は、単一民族・単一人種(?)国家であり、建前としては「同胞」を信じて行動することが善しとされています。

このような社会的背景の違いを反映したせいでしょうか。日本の不動産取引、仲介制度は信用できる会社、信頼に値する人に、一生に一度の高額な不動産取引の仲介を依頼するという思想が背景にあり、仲介業者全面依頼型・全面信頼型の制度だと言えます。

お客さまから信頼された会社や営業マンは、決してお客さまの信頼を裏切らない、決してお客さまに不利な行動は行わないという「性善説」が前提になっているのではないでしょうか。

しかし、現実の不動産マーケットの実態はかなり違います。賃貸アパートやマンションを引き払う際の敷金の精算では、多くの人が納得のいかない経験をしています。

貸し手市場だった時代の悪しき慣習を引きついだ、貸し主の意向に沿った行為だったとはいえ、不信感を持たれるのは仲介業者だったわけです。

売買仲介の際の「幻の競争者」を仕立てる「アオリ行為」や「オトリ広告」は、今でも健在なようです。不動産業の世界では一応プロの一人だと思っている私に対してすら、個人的な賃貸や売買に際して不透明な公正さに欠ける手法を試みた業者も少なくありません。

性善説を前提にした制度の下で、お客さまは不安と不信のなかで住宅取得行動をしなければならないという現実とのあいだに大きな矛盾があるわけです。

言うまでもないことですが、売り手と買い手ではその立場が違い、利害は鋭対立する側面があるのです。仲介業者が間に入って、「何とかまとめる」ことだけでは解決できない問題があるのではないでしょうか。

ましてや、「不動産ブローカー」という言葉の響きは、免許も持たず、物件情報を持ち廻る不動産仲介業の「周辺居住者」といった受けとめ方が一般的です。

ところが、米国の不動産ブローカー(Broker Licennse)は、医師、弁護士、に次いで社会的地位・信用度が高いと言われています。不動産という高額商品を扱うことで社会的な信用を得た結果なのでしょうか。

制度的にも、米国の不動産仲介人や仲介会社は建物検査会社や取引の保険・保障会社(Title Company)等の取引先との会食やゴルフ等の接待が禁止されているとのことです。

物件情報は全面公開を義務づけ、取引にあたっては少なからぬ関係者を関与させ、相互チェックシステムを作用させるという米国の不動産取引制度から学ぶべきことは少なくありません。

(3)中古住宅マーケットの違いと背景

米国に於ける中古住宅の流通量は、住宅バブルのピークだった2005年には約708万戸、それが2009年には約468万戸に激減しています。それにしても、日本の中古住宅の流通量約47万戸の10倍近い数字です。

この違いは米国が2.5倍の人口を有することだけでは説明がつきません。

統計数字はやや古いものも含みますが、中古住宅の流通に関する項目比率は以下のとおりです。

日 本米 国
住宅の平均寿命(1993年)26年44年
注文・規格住宅の比率(2002年)注文住宅85%
規格住宅15%
注文住宅30%
規格住宅70%
住宅価格の年収倍率(戸建て・1998年)5.45倍3.26倍
生涯の住宅取得回数1.17回2.40回
増改築投資の比率(対住宅投資額1998年)10.85%40.93%

これは住宅関連の統計数字に表れた比較項目ですが、これらの要因以外に、雇用形態の違いと、転職に伴う移動距離の大きさが大きく影響していることが指摘できます。

わが国では、終身雇用を前提とした勤務体系が一般的であり、転職に伴う移動も社宅や借り上げ住宅、あるいは単身赴任で対応するケースが大部分です。

当然のこととして、社内転勤の際に、「持ち家」を売却するという発想はありません。

一方、米国の場合、転勤=転職が一般的であるとされ、回数だけでなく、その移動も州をまたいだ広域的なものになるケースも多いようです。

転職や広域移動に際して「持ち家」を売却するのは至極当然のこととして行われているようです。

このような社会的背景を考えたとき、売却しやすい一般的な規格住宅を取得し、ペンキ塗りや日曜大工での住宅修理に励んで少しでも売却価格を高くしようと努力する、普通のアメリカ人の姿が浮かび上がります。

結果として、米国住宅の平均寿命は44年と永くなり、取引も活発になるということでしょうか。

米国の住宅価格は、日本に遅れること15年、2006年にピークを迎えました。

全米主要10都市の住宅価格指数の概要は以下のとおりです。

 2000年・・・100
 2006年・・・226(6年間平均で年率16%の上昇)
 2009年・・・158(ピークから30%下落)

サブプライムローンによるバブル的上昇と、リーマンショック後の急落。加えて、ベビーブーマー世代の所得減少と退職年代入りが、消費を減少させ、住宅価格の長期下落をもたらすと予測されています。

米国の不動産仲介業界は、インターネットの活用の面で、わが国より3年〜5年先行しているようです。

米国におけるネット不動産の現状と変化の方向、未来予測については、折りにふれて、日・米比較という点もふまえて分析を試みます。



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