ネット不動産フロンティアノート



不動産マーケットの特徴・・ No.6-5

プロの不動産仲介業でない普通の人にとって、住宅探し住宅購入は、住む場所の「仕入れ」行動や仕事ではありません。住宅探し、住宅購入それ自体が楽しみであり、一生一度の大イベントなのです。

プロである仲介業者が「住宅」を見る目や扱い方と、お客さまの住宅購入行動は、当然のことですが異なっています。

この違い、溝を埋めるための努力は、仲介業者にとっては永遠の課題です。この課題、改善のプロセスを忘れたとき、仲介業者は「存在意義」を失うことになりかねません。

お客さまにとって、住宅という買い物は、マネーと住宅の等価交換ではないのです。等価・対価に加えて、プラスαを得て、はじめて満足感が得られるのです。お客さまの期待を上回ったとき、お客さまは満足を感じます。

わが国の住宅購入の場合、その顧客特性として、「個性重視」、「スペックの要求がまちまちで高い」、「購買経験が少ない」ことが特徴的だと言われます。

その、要求水準の高いお客さまが、住宅に求める満足感は、以下の4項目を満たすものでなければ合格点はもらえません。

○ 環境満足 … 交通利便性・自然環境・生活利便性での満足。
○ 品質満足 … 欠陥がなく、機能性・耐久性・耐震性を満たしている。
○ 価格満足 … 相場より高くない、場合によっては格安な物件であること。
○ 感性的満足 … 人生観・住宅観との一致。

一方、商品としての中古物件には次のような商品特性があります。

○ 総てが、個別性の強いユニーク商品である。
○ 玉石混交の世界であり、玉か石かの見分けが難しい。
○ 品質・機能を見極めるには、専門的な知識・経験・技術を必要とする。
○ 地域限定の商品である。
○ 商品と扱い業者に対する不安感・不信感が根強い。

仲介業者は、お客さまと物件の間(はざま)で、売り主と買い主の間で仕事をしなければならないわけです。しかも、仲介業者は、契約成約になってはじめて仲介料がもらえる仕事です。お客さまの利益・立場に徹するということの難しさはこの辺にあるわけです。

最近は中古住宅・中古マンションの仲介が増えています。仕事の比重や将来見とおしからいっても、中古住宅・中古マンションの流通問題を避けて通るわけにはいきません。そこで、今回は中古住宅・中古マンションの市場分析を試みます。

わが国の中古住宅・中古マンションの流通市場

わが国の「住宅寿命」は短く、滅失住宅(取り壊された住宅)の平均築後経過年数は30年程度です。米国(55年)、英国(70年)と比べると短いわけですが、この20年間で5年ほど住宅寿命は延びています。

日本の住宅寿命が短くなったのは戦後のことであり、絶対量不足に対処するため、品質よりも数量を確保する「住宅政策」の下、戦後の一時期「安普請」が横行した結果だといえます。

さらに、生活様式の洋風化も重なり、古い住宅を使い続けるよりは、壊して建て替える方が優先されたという事情もあります。

1978年の宮城県沖地震を契機にして、耐震基準が強化され、わが国の住宅の耐久性・耐震性は大幅に改善されました。

1981年(昭和56年)以降に建築されたマンションや戸建住宅は、強化された耐震基準を満たしているわけですから、安全性という点では合格点です。

81年以降建築の中古マンションや戸建住宅が、これから流通市場に大量に出てくるわけですから、品質・性能面からみても、中古住宅のマーケットは活性化すると数字の面からも予想されるわけです。

わが国の住宅ストックは約5,770万戸です。これには古いアパートなども含まれていますので、市場性のある物件は5,500万戸程度でしょうか。 この5,500万戸の住宅ストックのうち1%が売りに出され、流通市場に出回るだけで55万件の物件が市場に出てくるわけです。

09年の新築物件数が80万戸を下回りましたので、中古物件の取引数が新築物件を上回るのは時間の問題と見られています。

しかも、耐震基準が強化され、性能・機能面でも改善の進んだ1981年以降に建築された住宅が6割を占めています。これは、中古物件の流通が飛躍的に伸びる可能性があることを示す数量的根拠です。

中古物件の流通が伸びると予測される社会的背景にも変化がみられます。

住宅取得層・需要層の中心を占める「団塊ジュニア」「ポスト団塊ジュニア」といった、20代後半から30代半ばの若者達の金銭感覚に大きな変化がみられます。

不況しか知らないこの世代は、終身雇用や所得上昇を期待しないという考え方が定着しつつあります。それを反映して、長期間の住宅ローンを目いっぱい組むことには否定的です。このことが割安な中古人気につながっていると考えられており、この傾向は強まりこそすれ、弱まることはないでしょう。

多額の住宅ローンを組んで、新築物件を取得しても、入居後はすぐに「中古物件」に変わって大幅に価値が下がるリスクを消費者は知ってしまったのです。

日本の住宅取得は資産形成ではなく、購入後はローンだけが残る「負債形成」のリスクが高いことを、デフレの20年が国民に教えてくれました。

加えて、ネットオークションやリサイクル量販店などでの取引に慣れた若年層は、「中古」という言葉に対して悪いイメージを持たなくなっていることも指摘できます。

新築に手が届かないから中古住宅を買うのではなく、その家にしかない魅力を生かし、自分流に改造・リフォームして、自分流の住生活を楽しむといったスタイルが増えています。

当局も、中古住宅の流通促進に力を入れています。その主な項目は次のとおりです。

○ 性能評価 … 住宅の性能評価と表示のあり方。ホームインスペクションの制度化。
○ 履歴情報 … 住宅の履歴・修繕情報の管理と開示の制度化。
○ 価格評価 … 中古住宅の価格評価の方法・基準の確立。
○ 瑕疵保証 … 中古住宅の売買に伴う瑕疵担保責任の保険・保証制度の確立。
○ 物件情報 … 中古住宅の売買・賃貸を目的とする物件情報の提供・質の確保・成約情報の集積制度の普及。

住宅産業は別名「トラブル産業」ともいわれます。物件の性能・品質に関するものから、取引上の問題、最近では建築施工会社の倒産まで、次々と問題は起こります。

特に中古住宅の市場では、供給者(売り手)と売り手側の仲介業者は住宅の質について十分に情報を持っているが、需要者(買い手)は住宅の質については十分に知らない、マイナス情報を入手できないといった、「情報の非対称性」という大きな問題があります。

情報が非対称である、つまり売り手と買い手の間に「情報格差」がある場合、市場・マーケットはどのような影響を受けるかということを専門的に扱う経済学があります。情報の経済学という専門分野です。

情報の経済学は、市場の機能は売り手と買い手が、それぞれ入手している情報を基にして行動することにまず注目します。

例えば、売り手は欠陥品と分かっていて、買い手がこれを見分けることができない場合です。消費者は欠陥品をつかまされることを恐れて、購入を控えるか、値段がよほど低くなければ購入しないという「経済原理」を情報の経済学は教えています。

今の中古住宅市場は、まさにこの状態に近いといえるのではないでしょうか。中古住宅の性能・品質が正当に評価され、機能するマーケットが存在しないといっても過言ではありません。

この「市場の失敗」を回避するためには、製品の品質を公開して、買い手と売り手がそれぞれ所有する情報を一致させることが必要であるとされています。

しかし、売り手が積極的に欠陥を公開することは期待しにくいことです。買い手である消費者が欠陥品を見分けることができる制度設計ができれば、安全・安心取引が実現し、市場の機能は回復すると期待されます。

中古住宅の場合、ホームインスペクター制度として、この欠陥を見分け、性能・機能を検査する専門家集団を育てる動きが具体化しつつあります。

情報面だけでなく、法的サポート体制を整備することで欠陥品を減らし、市場の活性化をはかることも可能です。

欠陥品(製品事故)に対して、損害賠償のルールを使うことで、欠陥品を減らす努力を生産者や販売者に喚起することができるという考え方です。

新築住宅の場合は「住宅性能保証・保険」としてすでに制度化されています。今後の課題としては、中古住宅にいかにして「性能保証と保険」を導入するかです。

ホームインスペクター制度とセットにした「性能保証」保険が整備されれば、中古住宅のマーケットは大きく伸びることになるのではないでしょうか。



ページ上部へ戻る


フロンティアへ

 テーマ 一覧

・記事を追加した時にお知らせメールを希望する方はこちらへメールをお送りください。Takakanへメール
・ご意見・ご感想もお待ちしております。
・当ページの文章の引用・転載はご自由にどうぞ。

関連ページ