ネット不動産フロンティアノート



【第9章】ホームページの運営

9-(2) 信頼獲得が最大のテーマ

住宅取得を考え始めたお客さまのうち、80%強のお客さまがインターネットを利用するようになりました。

これらのネット利用のお客さまが、不動産仲介業者のホームページを訪ねる第一の目的・本当の目的は何だと思いますか?大部分の仲介業者やそのスタッフは、物件情報を見るためにお客さまはホームページにアクセスしてくると信じて疑いませんでした。私自身もごく最近までそう思いこんでいました。

ところが、それが現実と違うのではないかという気がしてきました。実は、お客さまは、信用できそうな業者かどうかをチェックし、信頼できそうな業者を探すために個別業者のホームページを訪ねるというふうにお客さまが変化したのではないでしょうか。第一の目的は信頼できる仲介業者探しに変わったのではないでしょうか。

物件情報は巷にあふれています。マーケットが買い手市場・借り手市場になって20年になろうとしています。特別な事情がないかぎり、お客さまは急がなくても、物件は次々と出てくる時代だということが分かってしまったのです。

どこまで本当の話かは分かりませんが、米国では不動産仲介業者の社会的信用と地位は高いとされています。医者と弁護士と不動産仲介業者を友人に持てば、人生は豊かになり、ビジネスは成功するといわれているようです。

我が日本では、不動産仲介業者に対する社会的信用・信頼感はまだまだ不足しています。この日米の違いを十分に理解しないまま、米国流のインターネット利用、ホームページ活用を導入すれば何とかなるという考え方は「時代遅れ」になったのではないでしょうか?

米国流の不動産仲介業が「物件とその周辺環境を含む情報の量と質、そして鮮度」の発信が命だとするならば、日本流の不動産仲介業は、それらに加えて、会社情報の発信、信頼に値する仲介業者でありスタッフであることをお客さまに分かっていただくことが何よりも大切なのではないでしょうか。お客さまも、それを求めているという考え方は、「現実離れ」した考えでしょうか?

信用に値する、信頼できそうな仲介業者を探し出し、その業者の力を借りながら物件そのものをチェックし、失敗しない住宅取得を実現したいと考えるお客さまは確実に増えています。

お客さまは、売買仲介に限って言えば、物件選びより、まずは業者選びを優先する時代になったい言えるのです。不動産仲介業界内にも、この変化に気がついていた人はいます。買い主代理・バイヤーズエージェントの考え方を取り入れ、買い主としてのお客さまの立場に徹するというビジネスモデルです。

ホームページとメールというインターネットの利点・特徴を最大限に活用するビジネスモデルを確立した横浜の「オンライン不動産」の宮沢社長の言葉が強く耳に残っています。

「不動産業界というのは全く不思議な世界だ」、「お客さまの方を向かないで仕事のできる業界は他にはない、全く異質な体質だ」とベテラン社長は強調しています。

(株)オンライン不動産は買い主の立場・利益に徹する「購買代理」という立場で仕事を進めることを宣言している会社ですが、その成功の「秘訣」は徹底したお客さま本位の「コンサルティング営業」にあるようです。

しかし、まだまだ、わが国では買い主代理・バイヤーズエージェントは普及しているとは言えません。その理由としては、情報の囲い込みに直結する「双方代理」「両手数料取引」が依然として根強く残っているという事情に加えて、買い主代理に徹しようとする仲介業者そのものが、お客さまからの信頼を十分に得ることができないという事情があるからです。

お客さまにとっては、生涯一度の高額な買い物をするに際して、その相手・パートナーとなる仲介業者を信用していない、お客さまと業者・業界にあるこの深くて広い溝の存在、他の業種・業界には例を見ない「特殊事情」です。

このことに早く気づき、本気で対応策を考え、ホームページでも店舗でも本格的に取りくむことが、今、求められているのではないでしょうか。

お客さまは、業者・業界に対し、根強い不信感を持っています。この不信感という高いカベをとりはらうことが、業界の「悲願」でもあるわけですが、時間のかかる課題でもあります。

ここでは、個別業者としての対応策・信頼獲得手法、つまりはホームページでの不安・不信解消策について記します。

住宅取得の準備を始めたお客さまは、期待と不安・不信の入り混じった複雑な心理状態に置かれています。このお客さまの不安感の原因、不安の内容、不安感の正体を理解することが、不安・不信解消策の第一歩です。

○誰もが関わるのに、誰もがよく分からない世界

人間は誰でも、不動産と何らかの関わりを持ちながら生きています。借りて住むか、買って住むか、親の家に住むか、いずれにせよ住む場所=住宅は必要不可欠です。なのに、この世界のこと、不動産業界のことは誰にとってもよく分からない世界です。

○よく分からないのに価格は高い

不動産は価格の高い買い物です。中古住宅でも1,500万円程度、土地を買って家を建てた場合は2,000万円〜3,500万円程度はします。借りて住む場合でも月額6万円の家賃の家に4年間住めば、288万円の買い物です。なのによく分からない世界と関わらなければならない。お客さまの不安は募るばかりです。

○なにが自分にとっていちばん良い物件か分からない

予算もほぼ固まった。物件も多く見た。仲介業者の話もじっくり聞いた。選択基準の80%〜90%を満たす物件も見つかった。だけど、どれが自分にとって一番良い物件なのか、一番良い選択なのか、いま一つ分からない。これは、ある意味ではぜいたくな悩みなのかも知れませんが、現実でもあるのです。

○わからないのに決断しなければならない

業界の事情もよく分からない。どれが一番良い物件かも分からない。仲介業者を全面的に信用してよいのか否かも分からない。そんななかで、最終決断をしなければならないわけですから、不安がないといえばウソになります。

○業者とお客さまの深いミゾ

ダーティーイメージの先行する業界、そこに身を置く仲介業者と半年やそこらの付き合いで全面的な信頼関係を築くことは難しい問題です。そもそも、決まってナンボの仲介業者と一生一度の買い物をするお客さまの立場は、出発点においても、動機においても、経験値も違うものなのです。

福岡県の宅建協会は「ふれんず」という県内の物件情報を網羅したホームページを運営しています。09年秋からこのホームページのテレビコマーシャルを福岡県内のテレビ局を使って宣伝しはじめました。

その内容は「まかせて安心・宅建協会」ということの繰り返しです。一日平均38回、月に1,100回強の「広報・宣伝活動」のようです。

しかし、「まかせて安心……」と月に1,000回以上のコマーシャルを流したところで、お客さまの不安感は消えるのでしょうか。はなはだ疑問です。

不動産仲介業者のホームページに限らず、インターネットの窓口としてのホームページの役割は、「ITによるおもてなし」にあります。云うまでもないことですが、「おもてなし」の基本は相手の立場に立って考える、お客さまの立場に立って考えることにつきます。

仲介業界、特に売買仲介の世界では、一回だけのお付き合いという前提に立っての業界体質が根強く残っています。この体質や発想から転換し、生涯を通したお付き合いを目標とすることから、「おもてなし」の心や行動は生まれるのではないでしょうか。

そして、ホームページを通じての「おもてなし」のプロセスからしか、インターネット時代のお客さまの信頼は生まれないと断言しては言い過ぎでしょうか。

企業にしろ、人間にしろ、その評価・信用は「言っていること」ではなく、「やっていること」その行為・行動で決まります。どんなに立派なことを言い、綺麗事を並べても、人にしろ、会社にしろ信用されるわけではありません。行為・行動、実際の行いで評価されるわけです。

これを仲介業のホームページに当てはめて考えると見えてくるものがあります。

まず、更新の遅い、売却済の物件や入居済の物件をホームページに載せているようでは、それだけで失格です。

営業マンによる現地案内が不要になるまでの詳細な情報発信も信頼獲得には大切な要素です。情報を小出しにする、あるいは情報の一部を意図的に隠して来店を誘うなどの旧い手法は、インターネット時代には全く通用しませんし、信用を失うだけです。

「物件を見るためには来店するのだから、詳しい説明はその時に行えばよい」 「契約のためには来店するのだから、詳しい資料はその時に渡せばいい」 「とにかく見に来て下さい。見れば良さが分かります」 「当社は信用と実績があります。ご来店下されば分かります」

インターネットの時代、このような姿勢のホームページでは、お客さまの心を捉えることはできません。

物件の魅力、良さ、メリットを強調するのは当然ですが、デメリットや短所も明示することは、それ以上に大切なことです。

デメリットの明示や多額のローンを変動金利で借りることのリスクをお客さまに説明することは、お客さまの立場に立つと宣言している業者にとっては当たり前のことですし、仲介業者の自信と誇りの表明ではないでしょうか。

ホームページに「信用第一の会社です」とか、「お客さま本位の会社です」などと並べ立ててみても何の効果もありません。お客さまは、仲介業者のホームページを繰り返し訪れ、更新の頻度や物件情報の正確さ、鮮度をチェックしているのです。そして、ブログやコラムも見て、会社の姿勢やスタッフの人柄にも関心を示すのです。

ホームページというバーチャル店舗で、経営者や従業員がどれだけ「まじめに働き」、「誠実な行動」を実践しているかを示すことがホームページの「発信力」であり「表現力」ではないでしょうか。

加えて、ブログやコラムで企業の理念や使命・目標について愚直に書き続け、自己の全てをさらけ出してでも「伝えたい何かがある」ことを示すことではないでしょうか。

マーケティングという面から言っても、ブログやコラムは最大の「差別化」手法です。即効性は期待できませんが、ブログ・コラムの中・長期的な効用は絶大です。特にこの業界の最大の弱点である「信頼感の欠如」を補うにはブログやコラムしかないと断言してもよいほどです。

さらに、ブログ・コラムは社員教育にも大きな効果を発揮します。経営者が、会社の理念や使命について繰り返し書くことで、社内に目標に向かっての一体感が生まれ、結果として社員の意識も向上するという「教育効果」は小さくありません。

住宅探し行動を開始したお客さまは、業者・業界への不信感だけでなく、物件そのものへの不安感も強く持っています。

物件への不安の解消策としては、ホームページ上で出来ることは限られています。多くの写真を掲載し、マイナス情報も全面的にオープンにし、分かりやすい透明性のある説明に努めることぐらいしかホームページ・バーチャル店舗ではできません。

物件への不安は、現地で、現物を前にして解消するのが基本です。現地・現物を前にしての物件チェック、建物調査の技術・力量をスタッフが身に付け、お客さまの物件への不安を解消する能力を備えることは、これからの売買仲介業者にとっては必須の要件となりそうです。

お客さまは、多額のローンをくむことについても不安感を持っています。

本来あるべき姿、理想的な住宅取得のあり方としては、最初に資金計画について十分に検討し、ローン返済への不安を解消してからスタートすべきだとされています。

経済的に安定した人生を安心して送るためには、3つの資金についての計画が必要です。子供の教育資金、家族の住宅取得資金、そして夫婦の老後資金です。

目の前に「夢のようなマイホーム」が現れたとしても、すぐに飛びつくことは、お勧めできません。今は、買い手市場、買い手主導の時代なのです。

急いで結論を出すのではなく、無理のない返済可能額から物件購入限度額を算出し、自己の人生プランに合った住宅ローンを選ぶことが大切です。

住宅ローンを組む際に最も大切なことは、「借りられる金額」ではなく、「借りても大丈夫な金額」を確認することです。銀行は、「いくらまでなら貸せるか」は教えてくれますが、「いくらまでなら安全か」は教えてくれません。

金利上昇リスクについて検討することも重要です。ここ10数年はデフレ=超低金利の時代が続いていますが、1%前後の3年固定金利や変動金利で長期のローンを組むことは、実は、リスクの大きなことなのです。

3〜4%の長期金利が金融経済の「大前提」として資金計画を考えることは「常識」なのです。2LDK(20坪)、築10年のマンションが2,400万円で買えます!月々の支払は68,000円です。というチラシ広告の文言を鵜呑みにするのは間違いです。

チラシ広告の下の方に極小の文字で、35年返済・3年固定金利1.10%・ボーナス払いなし・(金利は3年後には変更になる場合があります)と書いてあります。

実は、住宅ローンを組む場合には、この極小文字で書かれていることが最大の問題点なのです。

先行き不透明な今の時代、返済能力を超えた多額のローンを組むことのリスク、金利上昇時のリスクについて、しっかりと説明することが、仲介業者とそのホームページは求められているのです。

あくまでも一般論としてですが、住宅購入価格の目安は、年収に対する住宅ローンの返済率から決めるべきだとされています。借入可能額や借入限度額から決めるのはこれからの人生に大きな不安材料を残すことになります。

年収に対する住宅ローン(35年返済)を含む居住費は20歳代で30%強、30歳代で28%弱、40歳代で25%以下、50歳代で20%以下が一つの目安、安全係数です。

この目安を基にして、40歳、年収600万の人の場合をシュミレーションしてみます。なお、返済は35年ではなく、20年を前提とします。(定年60歳は今後も続くとの予測を前提にしています)

年 収      返済率     ローン返済額
600万円  ×  25%  =  150万円

ローン返済額     返済期間         ローン借入額
150万円 × 20年(固定金利1.9%) → 2,500万円
                         (物件購入限度額)

家族構成や配偶者の所得予定などに幅のある数字ですが、意外と抑えられた金額です。年収の4倍強であり、安全性からみても妥当な金額です。この目安となる金額から大きく離れた物件を奨める営業マンは、自社の利益、目先の成績を求めているだけの人とみるべきでしょう。

お客さまの希望や年収・返済額をじっくりとお聞きして、資金計画に無理がある場合は、今回は物件購入を見送り、次の機会、条件に合う物件を一緒に探すことを提案するならば、その会社・営業マンは本物だといえます。

不動産売買仲介業者は、決まってナンボ、成約してこそ結果の出る世界です。どうしても、早く決めたいという思いが強くなり、お客さまの立場に立つことを忘れがちな業界です。

しかも、世の中全体が、先行き不透明な時代になっています。しかし、こんな時代こそ、お客さまの立場に徹して、多額のローンを組むことの不安やリスクについて、しっかりと説明し、話し合える仲介業者、営業マン、ホームページが求められているのではないでしょうか。

資金計画やローンについての専門家としてはFP(ファイナンシャルプランナー)という資格があります。

不動産業界ではまだあまり注目されていませんが、これからはローン借入のアドバイアスができるだけでなく、安心・安全に返済できるローン限度額についてもアドバイスのできる能力・知識が求められる時代になったのです。

ホームページだけで、上記のようなローンに対する不安、目いっぱいの借入リスク、金利変動のリスクを十分に説明することは難しい面もあります。

しかし、お客さまのローンに対する不安を、具体的な案件に即して、お客さまと共に考え、金融機関とも相談し、安全・安心な額と金利での住宅ローンの借入をお手伝いする会社ですという姿勢を示すことはホームページで出来ることですし、ホームページの大事な役目です。

ホームページを訪れたお客さまの信頼を獲得することが、ホームページの最初にして、最大のテーマなわけですが、信頼にも消極的信頼と、積極的な信頼とがあります。

ホームページで最低限なすべきことの一つは、消極的な信頼の獲得です。つまり、このホームページは物件情報も多いし、更新・削除もしっかりと実行している。透明性の高い、しっかりした会社かもしれない、という消極的な信頼・心証をお客さまに持ってもらうことです。

たとえ消極的な段階の信頼・心証であっても、お客さまはホームページのリピーターにはなってもらえます。実は、ホームページを初めて訪れたお客さまにリピーターになってもらうことこそが、ホームページの最大の課題なのです。

お客さまに、ホームページのリピーターになってもってこそ、たまには、代表者のコラムやスタッフのブログなども読んでみようかとなるのです。そんなプロセスを経て、会社やスタッフへの理解も進み、消極的な信頼から積極的な信頼へと信頼関係も深まるのではないでしょうか。

信頼関係の深まりが一歩進むごとに、メールでの問い合わせ、電話での問い合わせ、あるいは会員登録・希望条件登録とお客さまの行動も積極化し、物件も会社も絞り込んだ上での来店となるとのシナリオは、あまりにも「教科書」的でしょうか。



ページ上部へ戻る




フロンティアへ

 テーマ 一覧

・記事を追加した時にお知らせメールを希望する方はこちらへメールをお送りください。Takakanへメール
・ご意見・ご感想もお待ちしております。
・当ページの文章の引用・転載はご自由にどうぞ。

関連ページ