ネット不動産フロンティアノート



【第10章】メール営業とは

10−(1)メール営業の役割・位置づけ

インターネットをフル活用するネット不動産業者にとって、メール営業はどのような役割を担っており、その位置づけはどのようなものなのでしょうか。

この問題を考えるにあたって、まず、不動産仲介業のマーケティングとは何なのか、どうあるべきなのかという、マーケティングの原点に立ち帰ってみることにします。

マーケティングとは、
(1) 顧客が求めている商品・サービスを作り出すこと。
(2) 顧客の手もとにその商品・サービスの情報を届けること。
(3) 顧客がその商品・サービスを効果的に入手できるようにすること。
以上の3点を効率よく、支援・実行することがマーケティングの要諦だとされています。

これをネット中心の不動産仲介業にあてはめるてみると、(1)の役割りはホームページによる質・量・スピードと三拍子そろった物件情報の発信を実行することです。

(2)の役割りは、「メール営業」と実際の営業マンによる電話や面談、現地案内ということになります。

(3)の役割りは不動産仲介業では クロージング(契約・引渡し)であり、一般の商品販売では、セールスと呼ばれる部分です。

つまり、不動産仲介業の場合、本来「営業部門」に期待されている役割りとは、(2)のお客様に物件情報を速く、正確にお届けすることであり、現地で物件の詳細説明をすることだったのです。

ところが、実際の「営業現場」では、ついつい勢い余って、しつこい電話攻勢や夜訪となり、業界不信の原因を作ったのではないでしょうか。

マーケティングの中での「営業」の位置づけが、「お客様に物件情報を速く、正確にお届けする」ことであれば、この役割の大部分をメールで代行できることになります。

メールで問い合わせてくるお客様は、名前とメールアドレス以上の個人情報は開示したくない、つまり、仲介会社に対して警戒心を持ちつつも、詳しい物件情報・新しい物件情報・未公開の物件情報は手に入れたいという、一見矛盾した、複雑な心境にあると見るのが正解なのです。

このような状態に置かれているお客様の心・警戒心を解きほぐし、会社に直接電話をしてみる、会社を訪ねてみるという気持ちになってもらうためのいわば過渡的役割を「メール営業」は担っているのです。

電話をかけていただきく、直接来店していただくという、会社や営業スタッフとのリアルな出会い、リアルな対話に至るまでの過渡的な役目を果たすことが「メール営業」の役割だと割り切ってしまえば、そう難しいことではなく、残るのは「慣れ」だけではないでしょうか。

「メール営業」には、わが国固有の業界事情も関係していると思われます。

それは、仲介業者に対する「不信感」に満ちた、わが国固有の「社会的雰囲気」が生みだした、特殊なメール活用の一手段ではないかということです。

ホームページを繰り返し訪れるリピーターであるお客様が、まだ、電話や来店までは進めないが、この会社ならメールアドレスまでは開示してもいい、メールでの問い合わせ・対話なら不安はないという段階での会社との「コミュニケーション」の手法ではないかということです。

このようなお客様の心境や事情を無視して、住所や電話番号を聞き出し、「夜訪」や「電話攻勢」をしようとするのは、一方的な「会社側の都合」以外のなにものでもありません。

お客様がメールで問い合わせをする理由としては、以下の点をあげることができます。

○ 自分の都合、自分の時間優先で気軽に問い合わせができるメールでのメリットを最大限に生かして、情報入手をしたい。

○ ホームページを見ることで、自分は相手(会社側)をある程度知っているが、相手(会社側)は自分を全く知らない。つまり、当初は相手が不利な条件の下で、自分が主導権を持ちつつ「コミュニケーション」を開始したい。

○ メールだけでのやりとりでは、不十分だし限界があることはよく分かっているので、いずれは電話をかけるなり、直接店舗を訪ねてみることは必要となることは分かるが、何となく不安感が残るので、とりあえず、メールだけにしておく。

このようなお客様の心を理解すれば、メールで問い合わせをしてきたお客様に対し、住所や電話番号を聞き出す行為は「禁じ手」であり、あくまでも、お客様の側から、住所・電話番号を知らせてもらえるのを待つというのが、正解なのではないでしょうか。

メール営業は以下の4つの役割を果たすことで、その成果を確実なものにできます。

(1)不安や不信から、直接電話をかけたり、店舗を訪ねることまで踏み切れないお客様との「コミュニケーション」の手段。

これは、お客様の信頼を獲得するまでのあくまでも過渡的な役割です。

(2)時間的制約、物理的制約・距離的制約からメール中心にならざるを得ないお客様との「コミュニケーション」の手段。

地球の反対側に住んでいるお客様からの賃貸の問い合わせや、超多忙なお客様からのメールによる問い合わせは、これからも増加することでしょう。時差や距離の壁を乗り越える手段としてメールは強力な武器となります。

(3)今すぐ客でないお客様との「コミュニケーション」の手段。

会員登録をするお客様の70%程度は「いつか購入しようと考えている」お客様です。今すぐでないお客様に対する、メールでの物件紹介やメールマガジンの送信は、永い目で見た場合、その効用は小さくありません。

(4)契約後も続く、お客様との永い「コミュニケーション」の手段。

売買仲介業者の多くは、売買客は一回だけのお付き合い、その場限りのお客様として対応することが普通でした。ところが、インターネットとメールの普及により、お客様との末永い「つながり」が可能となったのです。

購入した物件に満足し、仲介業者の接客対応に満足してもらえたお客様は、考えようでは、仲介会社にとっての宝物、最大の資産ともいえる「経営資源」です。

この宝物「経営資源」を最大限に活用し、紹介客を生み出し、二度目の取引に結びつける努力は、メールをフル活用するネット不動産だからこそ採用できる長期戦略だともいえます。

インターネットとホームページを不動産仲介業者が利用を始めてまだ10年程度の経験しかありません。

ましてや、メールが営業マンの役割を果たすことができるなどということは、多くのベテラン営業マンには信じられないことだし、信じたくないことでしょう。

しかし、現実の世界はインターネットの普及で根底から変わったのです。お客様も、仲介業者もメールという「近代兵器」を手に入れてしまったのです。

だとするならば、メールという新兵器をどう使いこなすか、どんな場面でどう使いこなすかを修得することこそが、今求められていることではないでしょうか。

ダイレクトにお客様と対話が可能な電話営業や対面営業と比べて、メール営業はお客様の顔は見えないし、反応も分からない場合が多いわけです。

ベテラン営業マンほど、そんな「歯がゆい、じれったい」廻りくどい方法でなく、得意技である直接対面、直接対話に持ち込みたいという「意欲」が強いのはある意味では当然だとも言えます。

しかし、お客様はインパクトの強い、対面営業を避けるためにメールでの「コミュニケーション」を求めているケースが多いのです。

さあ、どうすれば良いのでしょうか。どう対応するのが正解なのでしょうか。

正解は、必ずしも一つとは限りません。何が正解であるかは、時代が決めることであり、お客様が決めることだからです。

やや大げさな表現をするならば、歴史の審判を受ける、つまり、「未来」が審判を下すということでしょうか。

わかり易く言うならば、メール営業の現状と「近未来」を考え抜くことから、方向が見えてくるとでも言うべきでしょうか。

ここで改めて、ネット不動産においてのメール営業の到達点(現状)とあるべき姿(未来)について、考えてみることにします。

ネット不動産とは、ホームページとメールを主体とした不動産仲介業の「経営形態」と定義できます。

このなかで、メールは、初期営業からお客様の個別事情に応じた個別対応から契約後の末永い「コミュニケーション」まで、ネット不動産の経営戦略上の重要な位置を占めるものといえます。

言いかえれば、メールはネット不動産にとっては「戦略兵器」、「近代兵器」なわけです。

ところが、メールという近代兵器の性能や効果を十分に理解できず、使い方に慣れていないネット業者も少なくありません。

メールで問い合わせをいただいたお客様に、会社から返信メールを何回も送信しても、メールの返事が全く来ない。この悩みは多くのネット不動産業者にとっては共通の悩みです。

当然なことではないでしょうか。メールで問い合わせをするお客様は、この段階ではまだ会社や営業マンを信頼できないからこそメールで問い合わせをするのです。

お客様の立場からすれば、ホームページというバーチャルな店舗・ネット店舗を一寸のぞいて見ただけなのです。気になる商品・物件情報があったから、ちょっと問い合わせただけなのです。

それを、従来の来店客、チラシ広告を見ての来店客と同じと考えて、追いかけ回して、詳しい顧客情報を聞き出して、あわよくば契約まで持ち込みたいといった考え方は、大きな間違い、勘違いです。

それは、仲介業者側の都合であり、業者の立場・利益そのものです。お客様の立場から考えれば、多くの物件情報、鮮度の良い詳しい物件情報が欲しいだけなのです。

この段階のお客様は、会社側からのメール営業に対して、いちいち返信していたのでは、わずらわしいし、物件購入寸前の顧客と誤解されて、営業攻勢を受けるのではないかと恐れる気持ち・心理が強いのです。

お客様から返事が来ないからといって、あきらめたり、メール営業を止めたりすることは、正しくありません。電話営業や対面営業では「しつこい営業」は禁じ手ですが、メール営業は送信中止の連絡が来るまで続けるのが正解なのです。

メールを発信し続けることで、会社の姿勢、仕事ぶりをお客様に理解してもらえる、重要な唯一といってもよい手段がメールなのです。これは、ネット時代の不動産仲介業の宿命であり、至上命題でもあるのです。

お客様にメールで送った物件情報のうち、売却や売り止めになった情報を改めてメール送信するのも効果があるとされています。

お客様が物件情報を収集する目的の一つは、「相場感」を養うことなあるわけですが、その相場を裏づける情報が「売却済」情報だからです。

「売却済」になりましたという情報をお客様にお送りしても、会社にとっては金銭的利益は全くありません。しかし、お客様には会社の誠意と姿勢はまちがいなく伝わるのではないでしょうか。

お客様が、いずれどこかの会社を通して契約するならば、この会社にしようと考えるのは自然な流れになる可能性は大です。

どんな業種でも、営業の基本はお客様との信頼関係をいかにして築くかにあるわけです。不動産仲介業の場合は、お客様は不安と期待を併せ持ちながら物件探し、業者探しをしているわけです。

個別性の強い不動産という商品には、良い点もあれば欠点もあるのがあたりまえです。優れた点、長所は誰でも分かり、誰でも伝えますが、欠点やマイナス面はなかなか分かりませんし、営業マンも伝えたがりません。

メール営業は、つきつめれば、一対一の個人的な関係です。マイナス情報もしっかりと、きちんと伝えることでお客様の失敗や失望を防ぐことができるわけですし、逆に、お客様の信頼を獲得することができるのです。

メール営業こそが、これからの不動産仲介業の中軸となる近代兵器といええるわけです。これを軽視したり、無視したり、あきらめたりする会社に未来はないと断言しても言い過ぎではありません。

旧来の不動産仲介業と違って、ネット不動産仲介業の営業とは、お客様とお会いする、あるいは、電話をいただくことから営業が始まるわけではありません。お客様がホームページを見た瞬間から、「営業」は始まっているのです。

ICTの先端技術を駆使したホームページは、物件情報は当然のこととしてデータベース化されています。地域別、価格帯別、物件の種別ごとに区分・整理された物件情報のデータベースそのものをオープンにすることで、お客様はその会社のスタンス・姿勢を感じ取ります。

メール営業の基本は、このデータベース機能を最大限に活用することで、お客様の希望する条件に適合する物件を抽出し、それらをメールでお客様に送信することにつきるわけです。

つまり、物件情報のデータベースこそが、メール営業の基盤であり、データベースはメール営業のためにあると言えるわけです。

メール営業が成り立つためのもう一つの条件が、見込客のデータベース化です。商圏内の世帯数の0.5%〜1%程度の購入予定者(見込客)のメールアドレスを獲得し、データベース化することでメール営業は軌道に乗るとされていますが、これが容易ではありません。

メールアドレスは、主として希望条件登録・会員登録というルートで収集するわけですが、実はこれが一番の難関なわけです。

本格的に、退路を断つぐらいの気構えでネット不動産に取りくんでいる会社でも、メールアドレスの獲得というメール営業の入口で苦労しているのが実態です。

会員登録のハードルを低くする、つまり、最初は名前とメールアドレスさえ伝えてもらえば、住所や電話番号は必須項目としないというやり方も一つの方法です。細かな希望条件も徐々に伝えてもらえばという姿勢です。

当社は、当初からのこの姿勢で取りくんでいますが、目標の60%程度でとどまっています。

世帯数の1%という会員登録の目標数値そのものが高すぎるのか、努力や工夫が足りないのか迷っているところです。

会員登録のハードルを高くして、本気で探している見込客を中心にメール営業を展開しようという会社も多くあります。住所、氏名、電話番号に加えて、職業、年収まで必須項目にしている会社も見られます。

会員登録のハードルを低くするのが正しいのか、高くするのが正解なのか、まだ結論は出していません。

しかし、お客様の立場に立って考えるならば、住所や電話番号まで最初から伝えることには抵抗感があるのは確かです。

ましてや、職業や年収まで必須項目とすることは、どう考えても常識はずれであるし、業者の論理そのものではないでしょうか。

不動産仲介業者のホームページで非公開物件の比率が増加しています。物担業者(売り主からの依頼を受けた業者をさす業界用語)が、客担業者(買い主を見つける業者をさす業界用語)のホームページで、物件情報を公開することを拒むケースが多くなっていることを反映した現象です。

物担業者も、売り主の真の利益を考えるならば、物件情報を全面的に公開して適正な価格で早く売却できるよう努力すべきでしょうが、なぜか、自社のホームページだけでの公開にこだわる会社も少なくありません。

このような業界事情を反映して、非公開物件が多くなり、その対策として、会員登録をすれば非公開物件の詳細情報も見られますよというホームページが増えているわけです。

お客様の立場に立って、会員登録のハードルの高・低を考えた場合、会員登録の条件を厳しくすることは、どう考えても会社側の都合、業界の内部事情と見えるのではないでしょうか。

ネット不動産仲介業のメール営業という限定した立場だけで考えれば、会員登録時にお客様の希望条件を多岐にわたって伝えてもらい、スタート時から中味の濃いコミュニケーションが取れることは望ましいことに違いありません。

しかし、マーケットは買い手市場・顧客本位に根本から変わったのです。不動産仲介業のマーケティングも時代の変化に合わせて、大胆に変わることが求められているのではないでしょうか。

第10章「メール営業とは」の章では、
(1)メール営業の役割・位置づけ(今回の分です)
(2)web2.0が変えたもの、メールによる「おもてなし」
(3)メール営業のノウハウ・差別化
を予定しています。



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