ネット不動産フロンティアノート



【第10章】メール営業とは

10−(2)Web2.0が変えたもの、メールによる「おもてなし」

インターネットが無かった時代、これだけ普及していなかった時代には、不動産業者はどんな営業活動をしていたのでしょうか。

マンション開発業者や土地開発業は営業マンを大量に雇い、飛び込み営業から無差別電話営業、物件案内チラシの各戸ポスティングまで、文字通りの開拓営業に力を注いでいました。手掛かりも無い、情報ゼロから出発し、お客様を「発掘」するという意味で「源泉営業」とも呼ばれていたようです。

一方で、物件案内チラシを新聞折込広告として全戸配布し、問い合わせ客や来店客、モデルルームや現地案内所への来場客に対して営業マンが対面接客をする「反響営業」も盛んに行われていました。

ネット時代の現在でも、このチラシ配布による反響営業は、一部で根強く残っているのが現状です。

いずれの手法も、営業マンによるお客様との対面・直接営業という点では共通している営業手法です。

この他にも、ネット時代の前後にかかわりなく、人通りの多い駅前等に店舗を構え、お客様の来店を待つという「街(待ち)の不動産業者」も少なくありません。売買仲介・賃貸仲介にかかわらず、今でも、消極的な「待ち」の姿勢は、業界の一部に見られる体質です。

インターネットが普及する以前から、パソコンは普及し、不動産仲介業界の一部では活用されていました。物件情報と見込客情報をパソコンの中でデータベース化し、物件とお客様のマッチング機能を最大限に引き出すことで仲介業の効率化を実現するという手法です。

しかし、この手法はインターネットの普及により、紙媒体での情報発信という致命的な弱点・費用対効果の低さにより、世の中から消えつつあります。

インターネットの普及が、お客様の行動様式と費用対効果という経済合理性を根本から変えてしまったのです。

ドッグイヤー・マウスイヤーといわれる今の時代、インターネットの世界は価格だけでなく、技術面でも通信手段も変化は急速です。

不動産仲介業での変化に限っていえば、Web1.0の時代は、物件情報提供の時代でした。ブロードバンドが普及し情報が誰にでも安く、速く届く時代がWeb1.5の時代といわれるものです。この時期に不動産仲介業界でもホームページの活用が本格化したわけです。

今現在は、Web2.0からWeb3.0への移行期ともいえる時代です。

本来であれば、このフロンティアノートも最先端の技術、つまりWeb3.0を論じ、未来を語るべきなのかもしれません。

しかし、現実の会社経営に責任を持ち、現実の変化に対応するのが第一の任務であるべき経営者にとってまずやるべきことは、最先端を走ることではなく、普及・実用化された技術を取り込み、実装化することではないでしょうか。

その意味で、ここでは、Web2.0の世界、Web2.0を不動産仲介業者が実装化する上での諸問題・方向づけについて論ずることにします。

そもそもWeb2.0とは、どんな世界なのでしょうか。

それは、消費者全般・ユーザーが、パソコンやipadに代表されるモバイルのプレイヤーとしての新しい行動を開始したということであり、それを支える使い勝手のよい技術や通信インフラが安価で提供可能となったことです。

その結果として、情報提供者もネットユーザーも自由に発想し、自在に行動する「舞台」、「活躍の場」が世の中に現れたということではないでしょうか。

不動産仲介業者にはどんな「舞台」が用意されているのでしょうか。その舞台で「魅せる」演技をするには、どんな準備をすれば良いのでしょうか。

まず第一に必要なことは、お客様・ネットユーザーの行動が以下のように変わりつつあるということをしっかりと認知し、対応することです。

○ お客様の検索行動がエンジン検索から個人ポータル・情報の自動収集(RSS)へと変化しつつあること。
○ お客様が最も望むのは、地図からの検索を可能にする物件情報のマップガイドであること。
○ 業者側からの一方的な発信情報ではなく、FacebookやミクシィなどのSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)による第三者評価・ネットコミュニティによる「共感」を重視する時代になりつつあること。(これがWeb3.0の時代ということです)

このようなお客様の変化に対し、仲介業者側はどう対応するのが正解なのでしょうか。

Web2.0からWeb3.0への移行期といわれる現在、技術の進歩・発展は急速です。しかし、最先端の技術を追いかけ回し、振り回されるのではなく、最先端の技術や新製品がお客様にどう受け入れられ、お客様がどう変化したのか、変化するのかを重視する姿勢こそが企業経営に最も求められることです。

第一の対応策はSEOの拡大策です。

従来のSEOは駅名+不動産、地域名+賃貸マンションなどのビッグキーワードでの検索エンジン上位表示が主力でした。しかし、検索エンジンの性能が飛躍的に向上し、きめ細やかな情報を即時に拾い集めることが実現したことに加えて、お客様の検索行動も、ビッグキーワードで地域の概要や相場を調べたうえで、地域名+分譲・賃貸マンション+2LDK+ペット可などのスモールキーワード、ニッチキーワードでの検索に移行する傾向が強いことが分かってきました。

お客様のこの傾向は、首都圏などの大都市で顕著に見られる変化ですが、これは物件数も多いが仲介業者も多いという激戦区の事情を反映したものでもあるわけです。

いずれにせよ、ビッグキーワードだけでなく、スモールキーワードでもお客様に物件情報をお届けしなければ生き残れない時代になりつつあるわけです。

このスモールキーワードをホームページの物件情報欄やブログに数多く掲載し、ニッチなお客様の検索行動を幅広く拾い集め、結果として多くのアクセスと反響を得るというのがSEOの地域戦略・ロングテール戦略です。

これからの時代、Web2.0からWeb3.0への移行期にあって、SEOの基本は、ビッグキーワードでの検索エンジン上位表示とスモールキーワードによるロングテール戦略という二正面作戦にあることは明確です。

第二の対策としては、ICT技術の進歩を受けて、情報発信サイトの自由裁量・自主編集の可能性が大きく広がったことです。ホームページは単なる「集客営業」の手段から、ネットとメールによるコンサルティング型応接営業の基盤としての活用が見えてきました。

経営用語でいえば、CRM(Customer Relationship Management)の不動産仲介業版でしょうか。

これらの対応策に本格的に取りくむには、ヒトもカネも技術もノウハウも必要です。資金面でいえば、ホームページの維持・運営、データベースの作成と管理、メール営業の実施とノウハウの蓄積には、少なくない支出を伴うわけです。

これらの支出を、経費としての支出とみるか、投資としての「出資」とみるかで経営者の力量が試されているのではないでしょうか。

結論的に言います。

未来を見つめる不動産仲介業者・ネット不動産仲介業者にとってはホームページは「資産」と位置づけるべきです。

ホームページを立ち上げ、改良を加え、データベースを構築し、メール営業の実践の中でノウハウを取得するための支出は通常の会計上の勘定科目としては経費項目となるわけですが、ホームページとその関連事項を「資産」と考えれば、勘定科目は資産取得のための支出・投資となるわけです。

金銭会計ではない「情報資産会計」の考え方が、今、求められているのではないでしょうか。

本題に戻ります。Web2.0の技術をフル活用したITによる「おもてなし」とは不動産仲介業ではどんなことをすれば良いのでしょうか。

まず、現実の「おもてなし」の分かりやすい例として、旅館の女将・ホテルのコンシェルジュに即して考えみます。

○ 第一に必要なのは、接客するスタッフ(女将・コンシェルジュ・営業マン)の接客経験の積み重ね、顧客経験価値です。
○ 提供するサービスの質の高さも間口の広さも求められます。
○ サービスを提供する場としての旅館やシティホテルのロケーションも含めた施設の顧客満足度も欠くことのできない要素です。

これをITチャネル、つまり、ホームページとメール・コミュニケーションで実現しようとするのが、不動産仲介業におけるバーチャル接客・ITによる「おもてなし」というわけです。

高級旅館やシティホテルでは永年の経験を積み重ね、ノウハウを蓄積し、スタッフも育成しています。しかも、ITによるバーチャル接客ではなく、現実の接客であり、サービスの提供です。お客様にとっても手に取るように理解できるわけです。

「おもてなし」という言葉はサービスを提供する側からの表現です。サービスを受ける側、お客様の側からみた場合は、お客様にとっての体験であり、英語で言えば、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)ということです。

つまり、英語圏では「おもてなし」に相当する直接的表現は見あたりませんが、同じ内容をお客様の側から見てユーザーエクスペリエンス、お客様の受けとめ方・体験として表現するようです。

考えてみれば当たり前のことですが、サービスの提供はお客様にとってどう受けとめられるかで価値が決まるのであり、この英語表現に英語圏でのビジネスのお客様に対する考え方、サービス業の本質を見た気がします。

不動産仲介業のホームページとメール応接に「おもてなし」の技法・考え方を取り入れるにはどうすれば良いのでしょうか。

ベテラン女将や一流ホテルのコンシェルジュを引き抜いてきて、接客させても解決するわけではありません。

第一、今の不動産仲介業界にヘッドハンティングされてれも、応募する女将やコンシェルジュがいるとは考えられません。

やはり、自分達の頭で考え、努力と工夫を重ねていくしか解決の道はないわけです。

まずやるべきことは、ターゲットの設定です。地域密着を基本戦略とする不動産仲介業者にとって、マスとしてのターゲットは明確です。地域内で不動産を売りたい・買いたい・貸したい・借りたい人と会社に限られるからです。

問題はこの多くのターゲットの中から、自社の経営戦略としてどの層に絞り込むかであり、絞り込んだ層に対する徹底した分析と研究です。

ターゲットを広くとるか、絞り込んで少数にするかは経営判断ですが、いずれにせよ、ターゲット・お客様層についての実践に裏づけられた行動分析・心理分析が求められるわけです。

ホームページを中心としたネット仲介業者の「おもてなし」は以下の三つの段階に分けることが必要です。

住宅・不動産を探すお客様が、自社のホームページにアクセスし始めた段階での「おもてなし」。

○ ホームページを初めて訪れたお客様に、このサイトは真面目にマメにやっている、何回も見るに値すると感じてもらい、リピーターになってもらうことです。
○ 繰り返しホームページを見てもらうことで、物件情報の量や正確さだけでなく、コラムや不動産購入の知識欄を通して、会社やスタッフの姿勢を理解してもらい、この会社は信用できそうだと思ってもらうことから、電話での問い合わせやメールでの問い合わせ、会員登録まで進むのではないでしょうか。
○ お客様が何を考え、抱えている問題は何か、悩みや迷いは何か、どんな情報を集めようとしているのかを常に考え抜き、ホームページ上で少しでも役に立つ情報を発信し続けることが、バーチャル店舗としてのホームページの役割であり、「おもてなし」です。
○ 「おもてなし」の達人とは、お客様が何を求めているのか、何に困っているのかを理解し、お客様の期待以上の価値を提供できる人だとされています。ホームページ上で少しでもこの達人の域に近づくことができれば、ホームページの役割は十二分に果たしたことになります。

お客様がメールでの問い合わせ、会員登録・希望条件登録をした段階での「おもてなし」。

○ この段階に到達したお客様は、実は、他の会社にもメールでの問い合わせや会員登録をしているケースが多くみられます。返信メールの速さだけでなく、情報の正確さやメール担当者の誠実さも試されていると見るべきです。
○ 会社にしろ、人間にしろ、その評価・信用は「言っていること」ではなく、「やっていること」その行為・行動で決まるわけです。お客様の不安をとり除き、疑問に応え、希望に合致しそうなメールによる情報が、ITによる「おもてなし」の中核ではないでしょうか。
○ メール営業・サイトによる「おもてなし」などWeb2.0の技術を利用した業種は、不動産仲介業以外には今のところ見あたりません。住宅という商品が、一生一度の高額な買い物であり、探し始めてから決まるまで時間と手間のかかる商品だという「商品特性」を反映した現象だからでしょうか。
○ いずれにせよ、メールとサイトによる「おもてなし」は不動産仲介業に個有の現象であり、独自の世界なのです。このお手本のない、独自の世界を切り拓く、フロンティアとしての役割を果たすことが、わが国の不動産仲介業界の先頭集団・ネット不動産仲介業者に求められているのではないでしょうか。

お客様が来店し、対面応接が実現した段階での「おもてなし」

○ 現地案内や現地での詳細説明、ローン手続きから契約・引き渡しまでのサポートなど、実際の「おもてなし」の場面となるわけです。
○ この段階では、会社に対する不信感はかなり除かれているわけですが、やはり、しっかりした対応と「おもてなし」で会社と営業マンに対する信頼感を高めることが必要です。
○ 物件に対する不安感は、現地・現物を前にして解消するのが基本です。ホームページ上での詳細説明の段階から、物件のマイナス面も含めてはっきりと明示し、お客様の不安感解消に努めるのは当然ですが、現地での物件チェック・建物調査の技術・力量をスタッフが身につけ、お客様の不安感の原因・理由を一つひとつ解消するのが実際の「おもてなし」の基本ではないでしょうか。

くどいようですが、お客様から電話で問い合わせを受ける、あるいは来店する、つまり、対面応接が実現するまでの段階はホームページとメール・コミュニケーションによる接客に限るべきです。あくまでもバーチャルな世界という節度を守る必要があります。お客様の顔は見えない、声は直接聞くことができない、会話ができないという、三重のハンディを負った応接になるわけです。

これを「三重苦」とみるか、困難で未知の分野だが、挑戦するに値する「新大陸」とみるかで、経営者としての真価が問われるのではないでしょうか。

ネット時代のお客様の住宅探しの行動が大きく変わったのです。折込チラシやモデルハウスで集客し、電話営業や訪問営業が通用する時代は終わったのです。

お客様と不動産仲介業者とのコミュニケーションの入口がホームページになってしまったのです。加えて、初期のコミュニケーションの方法がメール中心に大きく変わりつつあるわけです。

不動産業界には、「しつこい営業」体質は依然として根強く残っています。決まってなんぼの世界、成約がなければ給料が半減する成果給の営業社員にとっては、業界の地位向上・信頼性の回復などは「お題目」にもなりません。

不動産仲介業の経営者も、頭ではネット時代のお客様は物件情報も多く持っているし、業界事情についても良い面も悪い面もかなり分かってしまっていることについては理解している人が多いのです。

しかし、実際の行動では、電話での問い合わせに対しては来店をしつこく促し、メールでの問い合わせに対しても電話営業や訪問営業という業者側が最も得意とする「対面営業」に持ち込もうという姿勢は根強いものがあります。

言うまでもないことですが、メールで問い合わせをするお客様は、その段階では直接の接触を嫌うからなのです。

口では「お客様本位」「お客様第一」などと言いながら、実際の行動ではお客様が一番嫌がる営業攻勢をかける業者が少なくないのが現状です。

「おもてなし」と最も遠い営業スタイルに依存している同業者が少なくないのが残念でなりません。



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