ネット不動産フロンティアノート



【第11章】ネット不動産仲介業の未来

11−(2)10年後の日本経済と国民生活

10年後のわが国の不動産仲介業の姿をイメージする場合に必要なことはなんでしょうか?

第一の前提としては、10年後の日本経済がどんな状況におかれているかを見きわめることが必要になります。

次に必要なことは、国民の生活がどのように変化するかを見きわめることです。土地・住宅のマーケットがどうなるかも極めて強く関係してきます。そして、不動産仲介業界そのものが、どのように変化するのかの予測も、個々の仲介業者の経営のあり方に大きく影響するという意味で大切です。

まず、10年後の日本経済はどんな姿になっているのかを、不動産仲介業との関わりを中心に見ることにします。

20年以上にわたるデフレ・不況は、わが国が成長しない時代に入ったことを示しています。経済・金融政策の失敗や「成功」を論ずるのではなく、もはや、皆が豊かになる、皆が前進する時代ではなくなったことを、ありのままに認めることが本当の意味でのスタートラインに立つことではないでしょうか。

福島第一原発の事故は、日本経済がGDPを増やすことの困難さを示す象徴的な出来事です。

21世紀は「価格革命」の時代だともいえます。新興国が低賃金を武器にして「世界の工場化」を進めているからです。

この「価格革命」が収斂するには30年から40年の時間を要すると見られています。

中国が、1人当たりのGDPで日本に追いつくのは20年後、新興国の生活水準が先進国と肩を並べるのも20年後と予想されます。

加えて、アフリカ諸国が世界経済に参入し、グローバリゼーション化を達成するまで、30年〜40年を要することをみれば、世界の「価格革命」が収斂するには半世紀近い時間を要するからです。

わが国もこのような世界の経済環境と無縁ではありえません。国家破産による2倍程度のインフレという波乱はあるにせよ、底流は「価格革命」、つまりデフレが基調です。

不動産仲介業に最も大きな影響を与える、人口や世帯数の10年後の姿はどんなものでしょうか。

人口の減少は2010年代から加速しています。年平均81万人の減少ですから、10年も経てば、町が空き家だらけになって、街も老朽化し、国中が衰退感に満ちてくるのではないでしょうか。

世帯数は2015年の5,060万世帯まで増加を続けますが、その後は減少に転ずると予測されています。

問題は世帯構成の変化です。1990年からの20年間で、3〜4人の「核家族化」から、家族の「個人化」、「個家族化」が進みました。2010年の総務省の「家計調査」によると、単独世帯1,570万(31%)、夫婦2名世帯1,000万(20%)で、2人以下の世帯が半数を超えています。

加えて、この10年で、平均の世帯所得が20%も減少しています。2000年に全世帯平均で626万円だった年収が、2010年には500万弱まで低下したわけです。

しかし、人口や世帯数の減少は全国一律に進むわけではありません。「全市区町村の人口予測データ」によれば、2005年の人口を100としたとき、30年後の2035年の都道府県別の人口増減は、沖縄が唯一104と増加であり、次いで、東京が100,神奈川と滋賀が97,愛知96と、ほぼ横ばいです。

それ以外の府県は、秋田の68が最も人口減少率が大きく、南高・北低の傾向が見られますが、日本全体としては86.6、つまり13.4%の人口減少と予測されています。

注意すべき点としては、道府県単位で人口が減少しても、県庁所在地などの中核都市に人口が集中する傾向は続くので、県庁所在地都市などでは減少率が小さく、それ以外の都市・町村部の減少率はさらに大きくなることです。

10年後の土地や住宅価格はどうなるのでしょうか。

マクロ的に土地価格を分析する場合、ある国の土地資産総額と、その国のGDPは強い相関関係が見られます。

土地資産総額のGDP比率は、プライムローンに象徴される住宅バブル以前は、欧米先進国では1前後でした。

わが国の場合、1990年のバブル景気のピーク時には4にまで達し、現在は2.2まで低下しています。

マクロ的な土地価格を決定するもう一つの指標に、「経済の成長力」があります。その成長力を決める最大の要素が、生産人口比(生産年齢人口を非生産人口で割った比率)ですが、わが国の生産人口比のピークは1990年ごろで、土地バブルの時期と一致しています。

以上から、概括的にいえることは、全体として見た場合、名目GDP比率で1程度まで、つまり、現在の半値ぐらいになると予測されるわけです。

これは、あくまで全国平均、マクロ的に見た土地価格ということであり、人口の増加する東京圏と人口減が予想される地方都市では全く事情が違ってきます。

日本経済復活のカギは「都市化」であるという考え方が有力になってきました。20世紀を通じて、都市化こそが経済成長の源泉であったことが明らかにされたからです。

日本の都市化率は60%半ば、都市化率が90%近いイギリスやドイツをはじめとする他の先進諸国と比べて著しく「遅れて」います。

わが国が、「均衡のある国土の発展」政策から脱却し、都市化を進めることで、国全体としての経済成長を実現させようという考え方です。

土地価格は、人口構成でみて、上がった価格でも買う人が増えないと上がらないという特徴をもっています。人口が減る地域では、買う人が増えないので、上がるはずはないのです。

自社の存在する地域、自社が営業基盤とする地域が、人口予測・地価予測からみて、どのような地域に属するのかは、未来戦略を描く上で最大のポイントとなるわけです。

現在は、巨大な変化の時代です。わが国は、工業化社会から脱工業化社会への移行期の真っ只中に置かれているといえます。これは、経済のサービス化が進む過程で、戦後日本の成功を支えてきた諸条件が一つずつ失われていく、そんな状況におかれていることを意味しています。

ところが、次の時代・脱工業化社会・サービス化経済の姿がよく見えてきません。現在の日本を覆う不透明感、閉塞感、不安感はすべて、ここに帰着するわけです。

わが国の指導者層の多数は、今だに、「成長」によってさまざまな問題を解決できると信じているようです。現実は、20年来のデフレであり、国民の実質所得は低下し続けています。

このことが、国民の多くに将来への不安感を抱かせ、閉塞感をもたせる最大の要因となると同時に、国民の価値観にも変化をもたらしました。

日本人の価値観の変化と現状を、主に住生活についての価値観を中心にみることにします。

長引く不況とデフレは、国民の多く、特に20代〜30代の若年層の価値観を大きく変えつつあります。住生活に関わる価値観、住宅観についてみると、所有にこだわらないで、生活の利便性を重視し、使用を中心とした住宅観が強まっています。

土地や住宅は必ず値上がりするものという「神話」から、国民は解放されました。必ずしも持ち家の所有にこだわらないで、ライフステージに応じた住み替えは、これからは、多数派になるのではないでしょうか。

将来への不安や現在の生活への危機感は、住宅取得に対して慎重な態度、保守的な意識・行動を導きます。

同時に、「先のこと、将来のことを考えてみてもどうしようもない」という現実志向、非生涯設計志向を生み出します。

無理をして住宅を購入しない、現在あるものを活用するという、いわば、自然体の考え方、非チャレンジ志向が強まるのは、ある意味では当然なことです。

無駄なことに時間も金も労力も使わない。多くの選択肢から合理的な選択をする。限られた資源を共有し、効率的に活用する。こんな、新しいライフスタイル「スマートライフ」が、国民の住生活・住宅観の中に「浸透」しつつあるのを実感します。

わが国は、少子・高齢化が世界に例をみない速さで進みつつあることが現実であり、確実な未来でもあります。

しかし、少子化・高齢化として、一くくりに論ずるのはビジネスの面では大きな間違いを犯すことになります。少子化というのは、子供向けのマーケットが縮小することであり、高齢化が意味するのは、高齢者向けのマーケットが拡大することであるからです。

マーケットという視点からは、少子化と高齢化は正反対な事象なわけです。

20年後の、わが国の人口構成は、65才以上の高齢者が3,667万人、比率にして32%を占めることになります。

高齢化向けのビジネス、高齢者対応ビジネスは確実に拡大し、内容も豊富なものになることは「確かな未来」です。不動産仲介業、特に賃貸仲介業は、介護や看護との結びつきを重視した、時代が求めている、世の中が求めている新しいサービスを提供することが求められているのではないでしょうか。

次に、10年後の国民生活の中で、インターネットはどんな地位を占めるのか、インターネットはどこまで進化するのかを予見してみます。

わが国の不動産仲介業者がインターネットを導入し、サイトを開設し始めてから15年が経過しました。

ネット導入期には、大量の物件情報をサイトに掲載するだけである程度の反響があり、他社との差別化も可能でした。

次の仲介サイト第二世代(ネット成長前半期)に入ると、物件情報の量と質、検索のしやすさが成功のカギ・差別化策となりました。写真や動画、マイページ機能など、不動産仲介サイトが高機能化していく時期でもあったわけです。

続く仲介サイトの第三世代(インターネット成長後期)は、提供するのは物件情報だけでなく、業界事情や会社情報、経営者や営業マンの人柄情報などのコンテンツを含んだ、情報の全面開示が盛んになった時期です。サイトの目的が、物件情報の提供から、お客様の信頼獲得へと大きく変化した時期ともいえます。

さて、今後はどうなるのでしょうか。インターネット活用は成熟期に入ったと見るか、まだまだ成長・変化する「変動期」、「激動期」にあると見るかで、対応は大きく分かれるのではないでしょうか。

インターネットがこれからどう進化するのか、それによって国民生活や意識・行動がどのように変化するのかを不動産仲介業との関連で見ることにします。

第一は検索エンジンがどんな進化をするのか、それによってお客様の検索行動ががどう変化するかです。

ジアース社がGoogleと提携してGoogleマップ上に賃貸物件情報の提供を始めたのが2年ほど前です。

お客様にとっては大変便利な機能でしたが、なぜか、Googleは世界同時にこのサービスを中止しました。しかし、個別の仲介業者は地図上で物件情報を明示することのメリットを知ってしまったので、今では、先進的な仲介業者のサイトでは「地図から探す」機能が付くようになりました。

検索エンジンの世界は、激しい競争社会です。使い勝手の良さやお客様が求めている情報に、いかに適正に素早く応じられるかをめぐって、水面下で激しい技術開発競争が続けられていました。

日本におけるYahooとGoogleの競争は、ヤフーが検索エンジンの技術面・システム面を全面的にグーグルに依存することで決着しました。システム技術としてはYahooが完全敗北したわけです。

不動産仲介業の立場から検索エンジンを見る場合、どうすれば自社ホームページを上位表示させるかに関心が向かいがちです。

検索エンジンの運営側としては、利用者の満足度を上げるためにはどんな工夫が必要なのか、上位表示に値するホームページを見分けるためにはどんな判断基準と技術が必要なのかに文字通り心血を注いでいるわけです。

SEO(検索エンジン最適化対策)を引き受けますと売り込んでくるSEOコンサル業務の大半が、禁じ手を使ったり、スパム行為で一時的な上位表示を狙ったりしている現状は、まことに嘆かわしいことですが、真のプロである検索エンジンの運営会社に勝てるはずがありません。

10年後の検索エンジン、検索サービスがどのように進化しているかを占うのは難しいことですが、利用者である普通の市民が、検索サービスに何を求めるかによって決まることだけは確かです。NAVERやMooterのような専門的な、特定の機能に強い検索サービスが業界の覇者になるとは思えません。

物件情報、業者情報、取引知識を求めている不動産仲介業者のお客様は、やはりGoogle、Yahooで検索行動を始めると理解するのが自然です。

検索エンジン・検索システムの根源的機能、画期的機能は情報の仲介機能にあるわけです。不動産仲介業とインターネット・検索システムが非常に相性がいいといわれる理由は、実は、ここにあったのです。

検索エンジンの運営側も、この仲介機能と検索精度の更なる向上を目ざして進化を遂げるでしょう。仲介業者側としても、検索エンジンの進化に遅れずに、愚直に、素早く対応することが求められているわけです。

次に注目しておくべきことは、スマートフォンに代表されるモバイルの世界がどう進化するかです。

モバイルの変化・進化は、(1)メーカー側の変化、つまり、端末器がどう変化するのか。(2)通信業者側の変化、インフラがどこまで整備されるのか。(3)利用者の変化、つまり、ネットユーザーの行動がどう変わるのか。(4)ユーザーの変化に、仲介業者はどう変化し、対応すべきなのか、に区分することができますが、ここでは(3)と(4)を中心に見ることにします。

まず、現に起きつつあるユーザーの変化です。スマートフォンの便利さ、手軽さを知ったユーザーは常に身に付けて持ち歩きます。物件探し、物件調査の場合でも、事前にパソコンで下調べをするのではなく、まず、自分が住みたいと思う目的地まで行って、スマートフォンでその近くの物件情報を検索するという変化が現実化しつつあります。

まだ、多数派ではありませんが、モバイルそのものの進化、操作性の向上・多機能化・クラウド活用による情報収集能力の向上により、スマートフォンに代表されるモバイル端末器は一層普及し、物件検索行動もモバイル利用が主流になる日は近いわけです。

仲介会社側の対応としても、お客様の変化に対応できなければ、置いてきぼりになるわけですから、自社サイトのスマートフォン対応は、しっかりと取り組むべき課題です。

加えて、自社の物件情報にGPS(緯度経度情報)を付加し、最先端の技術も活用することで、競合他社との差別化が図られ、お客様に選ばれる仲介会社となれるわけです。

2011年、インターネット経由の商品購入、ネット消費は10兆円を超えました。コンビニの売上高を超えたことになります。「楽天市場」だけで取扱高は1兆円を上回りました。

ネット消費の利用層が30〜40代中心から、50〜60代に広がりを見せています。加えて、テレビとパソコンの融合が進行しつつあります。テレビでインターネットを使ったり、パソコンでテレビを見る時代は、目の前まで来ています。

テレビとパソコンの融合は、家庭の主婦層が日常的にインターネットを利用できる環境が整ったことを意味します。このことが、不動産仲介業に与える影響は決して小さいものではないはずです。

インターネットが国民の意識や行動をどこまで変えるのかは、まだまだ「未知」の分野であり、仲介業者にとって新しい世界であることも事実です。

はっきりとした先が見えない世界で、多くの困難が待ちうけるトンネル工事の最先端(切羽)に立つ勇気・気概、それこそがフロンティアに求められていることではないでしょうか。

時代が求めている課題を、しっかりと引き受けて、敢然として新しい道を切り拓くべきとする「理想主義」という意味もフロンティアスピリッツには含まれているのです。

目ざすべき方向、目標は見えているのです。日々の努力が目標に結びつく、そんな時代と世界にネット不動産仲介業者はいるのです。

次回のテーマは、「10年後の不動産仲介市場と仲介業界」を予定しています。



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