ネット不動産フロンティアノート



−ネット不動産フロンティアノート番外編 NO.2−

『ニーズとウオンツの違いから、不動産仲介業を考える』

世間一般でも、マーケティングの世界でも、ニーズ(Needs)とウオンツ(Wants)はかなり曖昧に使われています。しかも、時代の変化・生活の変化・消費者志向の変化に伴い、ニーズやウオンツもまた変化しています。

本稿では、ニーズ(N)とウオンツ(W)の違いとその変化を切り口にして、不動産仲介業のあり方と未来について考えてみることにします。

まず、NとWの違いを一覧比較すると以下の通りです。

N(ニーズ) W(ウオンツ)
○顕在欲求○潜在欲求
○具体的○抽象的
○低次の欲求○高次の欲求
○生理的な必要○贅沢なものが欲しいという欲求
○必要=足りないもの○欲求=あったら良いもの
 →無いよりあった方がいい
○問題解決に繋がっている○問題解決に繋がっていない
○欠乏状態(水を飲みたい)○冷たい水を飲みたい
○必要性・入用性○一歩踏み込んだ願望
 →特定の商品やサービスで自分の願望を満たしたいという欲求がウオンツ
○無いと困る○我慢できる
○基本的価値○付加価値
○なければ困るモノ○なくとも困らないが、人によっては非常に欲しいモノ
○意識された必要性○意識されていない欲求
○原始的(動物的)欲求○人間としての(高次な)欲求

NとWを一覧対比することで、何となくその違いが見えてきます。

次にサービス業の原点である満足感の違いからNとWの違いを見ると、ニーズは当面の、当座の浅い満足感に対応するものであるのに対して、ウオンツは高度な深い満足感を満たすものといえます。

マーケティングの視点からニーズとウオンツを見ると、NとWを一致・合体させることで販売・契約に至るということになります。

つまり、「腹が減った」というのはニーズであり、「ハンバーガーが食べたい」はウオンツであり、その欲求を「マクドナルドにしよう」とまで具体化し始めて需要となるわけです。

「時代の変化がNとWも変える」

この20年、わが国は物質的には成熟社会になったことに異存はないでしょう。

モノが不足していた時代には、ニーズは誰の目にも見えていたわけで、「作れば売れる」よき時代だったわけです。

ところが、モノが溢れている時代、必要なモノは何でもある時代、つまり成熟社会にあっては、お客様のニーズ・ウオンツは潜在化してしまうわけです。

この時代、成熟化社会にあって求められる能力(マーケティング力)は、潜在化したニーズ、つまり、顧客の気づかないニーズの発掘・発見力となるわけです。

あたりまえのことですが、ニーズもウオンツも消費者・需要者が主導権を持っており、そのN・Wに応える場がマーケットなわけです。

事業・ビジネスとは、企業が提供する価値(商品・サービス)を市場のニーズ・ウオンツのマッチングから生まれるものであり、それ以外にはあり得ません。

このマッチングの壁を乗り越え、市場のN・Wにいかに結びつけるかがビジネスのポイントであることまでは誰でも分かるわけですが、実現できる人は極めて少数です。

幸い、インターネット活用・ホームページ活用・物件情報と顧客情報のマッチングデータベース活用を中心に据えた「ネット不動産仲介業者」には、ネットとデータベースという強力な近代兵器があります。

HPという近代兵器の最大の特長・利点は、さまざまな試みにチャレンジし、試行錯誤を何度でも重ねることができることです。

つまり、地域のお客様が、今、何を求めているのか、満足する住まいは何なのか、時代の変化とともに、お客様の心の変化・ニーズやウオンツがどう変わろうしているのかも捉えることが可能になったのです。

この近代兵器をフルに活用することで、不透明な時代を切り拓き、地域で生き残るだけでなく、勝ち残れる仲介業者になることは十分に可能なはずです。

岐阜市を本拠にして、住宅リフォーム店・工務店の不動産仲介業への進出を支援している(株)ゴッタライドの吉田社長は、リフォーム店のHPのあり方を以下のように分かりやすく分析していますので紹介します。

まず、二つの視点からHPを分析します。

「読まれるサイト」を目ざすのか、「見られるサイト」を目ざすのか、お客様目線・ターゲット目線から、その違いを明確にすべきと説きます。

読まれるサイトは、男性的な視点・理性的な視点、つまりは、文章中心に構成されるべきとされます。

見られるサイトは、女性的視点・感覚(感性)的な視点で構成し、当然、写真を多用し視覚に訴えるコンテンツとなるべきとされます。

これを住宅リフォーム業のHPに当てはめると、外壁塗装や太陽光パネル設置を中心にした業態の場合、「読まれるサイト」を目ざすべきです。

なぜならば、お客様の関心は
○リフォーム業者の選び方、塗料の選び方、施行方法に主な関心があること。
○合理的な判断をするための情報・コンテンツを求めていること。
○正しいリフォームのあり方を論理的に知りたいこと。
……という点にあるのであって、当然、文章中心のHPで、お客様のニーズに応える内容となるべきです。

一方、キッチンやお風呂のリフォームに力を入れている業者の場合は、「見られるサイト」を目ざすべきとされます。

キッチンやお風呂、水廻りのリフォームの場合、決定権者は家庭の主婦であり女性です。
○素敵なキッチンへの要望・感情を強く持っていること。
○スペックや機能性よりも、写真を多用した、視覚的に訴える、ウオンツを刺激するコンテンツを重視すべきであること。

以上の分析は、ニーズとウオンツの違いを意識した上で、HPのあり方を具体的に分析したものであり、学ぶことの多い分析です。

以上の分析・検討をふまえた上で、不動産仲介業の向かうべき方向、HPのあり方について検討します。

わが国は、今や住宅過剰の時代に入っています。2012年には世帯数が5,000万余りであるのに対して、住宅戸数は5,750万戸となっており、750万戸(13%)の空家が存在しています。

つまり、住宅の絶対量が不足していた時代はとっくの昔に終わったということです。

住宅不足の時代であれば、最低限の雨・風をしのぐ空間としての「住宅」のニーズも存在したわけですが、今、求められているのは住宅の基本価値・基本性能(ニーズ)に加えて、デザインやイメージ、設備・環境等の付加価値(ウオンツ)をいかに差別化・個別化できるかではないでしょうか。

賃貸派にしろ、持家派にしろ、「ここに住めば好きなジョギングができる」、「楽器が弾ける」、「夜景が楽しめる」、「毎朝、バードウォッチングができる」などの付加価値(ウオンツ)が重視される傾向が強くなっているわけです。

成熟化社会・物質的には豊かな社会にあって、住宅だけは質の面で満たされないものが多い分野でした。

平均的な世帯所得の減少が続くなかで、高所得層と低所得層の二極分化は一層進むものと予測されています。

だからといって、ニーズ(基本性能)重視、即、低所得層向け需要ではないし、ウオンツ(付加価値)重視、即、富裕層向け需要とならないのが、住宅産業・不動産業の難しいところでもあるし、面白いところでもあるわけです。

成熟社会・豊かな社会がいかに進んでも、人々が住宅に求めるものは、第一に安全・安心・立地・環境といった、基本性能(ニーズ)であり、これは、住宅選びの「必要条件」だといえます。

この必要条件を満たした上で、個人的な価値観・感性・満足感にフィットする付加価値(ウオンツ)を加えたものが、必要十分条件(ニーズもウオンツも満足させる)を満たす住宅となるわけです。

○ニーズとウオンツの両面を満足させる住宅とは何か?
○二つの面を満足させるために不動産仲介業が提供できるサービス・情報は何か?
○そのために仲介業者のHPはどんな役割が果たせるのか?ネットとHPを活用したネット不動産仲介業者は日夜悩んでいるわけです。

実は、悩んでいるのは仲介業者や業界の人間だけではありません。一生一度の高額商品である「住宅」を探し求めているお客様も悩み、迷っているのです。

地盤はどうか、建物の基本構造・性能は大丈夫か、防犯・防災面の安全性はどうか、街としての将来性はどうか、……悩みはつきないわけです。

これらの、いわば、基本性能(ニーズ)に関する悩みごとに優先順位をつけ、できれば付加価値(ウオンツ)も満足させる物件探しのお手伝いが仲介業者の仕事(サービス)の本質なのではないでしょうか。

これからの不動産仲介業は、その専門性・専門能力を生かしたコンサルティングに力を入れるべきだといわれることも、このような背景・時代の変化を理解すると納得ができます。

ニーズとウオンツを意識したHPはどうあるべきなのでしょうか。

ニーズに応えるという面では、価格・所在・基本性能・環境・利便性等々について、マイナス情報も含めて総て公開するのは当然のことです。

加えて、建物内外の写真・周辺環境の写真、さらには、物件個有の付加価値等々、お客様のウオンツに応える情報を発信することが、これからの仲介業者のHPには求められているのではないでしょうか。


追記

本稿では、ニーズとウオンツの違いを切り口として、不動産仲介業のあり方について分析してみました。

ニーズ(基本価値・基本性能)をベースにしながら、時代やお客様が求めているものは、ウオンツ(付加価値・付加機能)であることが明らかになりました。

次回に予定している番外編(3)では、「不動産仲介業の未来展望」――付加価値実現サポート業としての不動産仲介業――について考察します。



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